活動レポート
見た目は少し個性的。でも、素材は一級品。──加工用原料との向き合い方
■ 今年のトマトは、240kg
発酵エキスを製造するうえで欠かせないのが、野菜や果物です。
年中無休で育て、収穫し、届けてくださる全国の生産者様がいてこそ、私たちの製造は成り立っています。
今年発注したトマトは、全部で240kg。高知県の生産者様から150kg、北海道の生産者様から90kg。
箱にすると、約60箱分になります。
そしてこのトマトは、いわゆる「加工用」と呼ばれる原料です。
■ 割れていたり、大きすぎたり、小さすぎたり
ひと箱を開けると、実にさまざまな顔が並んでいます。
割れてしまっているもの、大きくなりすぎたもの、逆にスーパーに並ぶものと比べると小ぶりに感じるもの。
大きいものだとソフトボールよりやや小さいくらい、小さいものは普通のトマトとミニトマトのちょうど中間くらい。
ひとつとして同じ形がありません。
けれど、味も、素材としての力も、まったく変わりません。
形が整った「A品」が世の中へ出ていく一方で、成長の途中で形が変わってしまったものは、
見た目だけを理由に売り先を失ってしまうことがあります。
丹精込めて育てたものが行き場をなくす。
その悔しさは、想像するだけで胸に残ります。
■ A品と近い価格で買う──いつからかは、誰も言えない
私たちは、そうした原料をできるだけA品と近い価格で購入しています。
実はこの方針、いつ始まったのかがはっきりしません。
野菜の担当になったときには、すでにそうすることが当たり前になっていました。
制度として掲げられたというより、リスペクトの中でずっと引き継がれてきた考え方なのだと思います。
「安く手に入るから引き取る、ということではありません。」
生産者様の収入の安定につながる形で原料を活かすこと。
生産者様にとっても私たちにとっても無理がなく、来年も再来年も続けられる関係であること。
そこを大切にしています!
以前、豊作でトマトがたくさん余ってしまった年には、注文量以上を買ってもらえないかという打診をいただき、
引き受けさせていただいたこともありました。
そのとき頂戴した感謝の言葉は、今も印象に残っています。
■「え!これが加工用なの?」
先日、アメリカ在住のお客様に工場をご見学いただく機会がありました。
ちょうどそのタイミングでトマトが入荷したので、
実物をご紹介しながら「主にこういった形の悪い加工用の原料を仕入れて使っています」とご説明したところ、
少し驚いたご様子で、こうおっしゃいました。
「え!これが加工用なの?」
「アメリカのスーパーに行ったら、こんな形の物なんてたくさん売ってるよ!」
日本では加工用に回るようなトマトが、向こうでは通常品として当たり前に店頭に並んでいる。
日本の「見た目の基準」がいかに高いか、
そして私たちが普段あたりまえだと思っている基準は、決してあたりまえではないのだということを、改めて実感した瞬間でした。
■ 野菜は、思いどおりにいかない
ただ、加工用原料と向き合うということは、良い話ばかりではありません。
相手は自然のものです。
工業製品のように「毎年同じ量が、同じ品質で届く」ということは、決してありません。
天候ひとつで収穫量は大きく振れますし、品質も年によって変わります。
豊作の年もあれば、収穫そのものが危ぶまれる年もある。それが、野菜を原料にするということです。
今年も、そのことを痛感する出来事がありました。
今から1週間と少し前、北海道の生産者様から連絡が届きました。
畑が壊滅に近い状態で、収穫できるトマトがなさそうだ、と。北海道といえど、今年の酷暑の影響は大きかったようです。
ところが今朝、同じ生産者様から、こんな連絡をいただきました。
「なんとか復活しました」
正直に浮かんだのは、「お盆休みの間に、いったい何が起こったんだ」でした。
何がどう好転したのか、詳しいことは分かりません。ただ、その裏に生産者様のどれだけの手と、諦めなさがあったのか。
想像するしかありませんが、想像するだけで十分でした。
■ 試行錯誤しながら、届け続けられる形を
こうした不安定さは、近年いっそう強まっていると感じています。
気候変動の影響で、品質の低下や数量の不足が、実際に一部で起こり始めています。
だからこそ私たちは今、原料を安定して確保できる体制づくりを進めています。
たとえば、産地を分散させること。
今年のトマトを高知と北海道の2産地から仕入れているのも、その考え方によるものです。
この振り分けは私たちが決めているわけではなく、
長年お世話になっている中間業者様が、各産地のその年の状況を調べたうえで組み立ててくださっています。
だからこそ、北海道の畑が今どうなっているか、という話も私たちのところまで届いてきます。
そしてもうひとつが、生産者様との関係そのものを増やし、深めていくこと。
新しい産地や生産者様との出会いを大切にし、規格から外れた原料も含めて引き受けられる関係を、少しずつ積み重ねていく。
これは一朝一夕にできることではなく、今も試行錯誤の途中です。
安定供給というのは、どこかから足りない分を買ってくれば済む話ではありません。
誰と、どういう関係を、どれだけの時間をかけて築いてきたか。
そのすべてが積み重なって、はじめて成り立つものだと考えています。
数字の裏側には、いつも誰かの目と手があります。
■ 原料の力を、そのままお届けするために
見た目は少し個性的でも、素材としての価値は一級品です。
厳しい気候の中でも懸命に育ててくださる生産者様がいて、産地の状況を見ながらつないでくださる方がいて、
そうして届いた原料を、私たちが丁寧に仕込んでいく。
これからも、生産者様が大切に育ててくださった原料の力を、そのまま発酵エキスとして活かし、
皆様にお届けしていきたいと思います。